「製造業は給料が安い」
そんな言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし実際のデータを見ると、製造業の年収は決して低くありません。
むしろ、同じ製造業の中で「どの職種か」「どの規模の会社か」によって、年収は200万円以上変わります。
この記事では、厚生労働省と国税庁の最新統計をもとに、製造業の平均年収を年代別・職種別・企業規模別に徹底的に分解します。
そのうえで、今の会社で年収を上げる方法と、転職で上げる方法の両方を解説します。
製造業の平均年収はどのくらい?
製造業の賃金データ
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月公表)によると、製造業で働く一般労働者の賃金(所定内給与額)は男女計で月33万0,000円、前年比3.6%増でした。
男性は35万5,900円、女性は25万4,200円、平均年齢は44.1歳、平均勤続年数は15.3年となっています。
一方、賞与まで含めた「実際の年収」で見ると数字は大きく変わります。
国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」では、製造業の正社員の平均年間給与は568万円で、前年から6.6%増加しました。
給与所得者全体の平均が478万円、正社員に限ると545万円ですから、製造業は全業種平均を20万円以上上回っていることになります。
平均値を見るときの最大の注意点
ここが多くの記事で誤解されているポイントです。
賃金構造基本統計調査の「賃金」は所定内給与額、つまり残業代も賞与も含まない金額です。
製造業の月33万円を単純に12倍しても396万円にしかなりませんが、実際の平均年収は568万円。差額の約170万円が、残業代・交替手当・賞与にあたります。
製造業は勤続年数が長く(15.3年)、賞与水準も比較的厚い産業です。
そのため「月給×12」で計算する年収記事の数字は、現実より2割〜3割低く出ます。
自分の年収と比べるときは、必ず賞与込みの数字で比較してください。
他業種との比較
産業別に見ると最も賃金が高いのは電気・ガス・熱供給・水道業(44万4,000円)、次いで学術研究,専門・技術サービス業(44万0,300円)で、最も低いのは宿泊業,飲食サービス業(27万7,200円)です。
製造業(33万0,000円)は中位に位置しますが、残業・交替勤務・賞与を含めた総額ベースでは順位が上がるのが製造業の特徴です。
製造業の年収を年代別に見ると?
令和7年賃金構造基本統計調査の製造業・男女計データに、賞与・残業分(平均で所定内給与の約1.4倍相当)を加味した年収目安が以下です。
| 年齢 | 所定内給与(月) | 年収目安(賞与・残業込み) |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 22万7,100円 | 約390万円 |
| 25〜29歳 | 25万9,300円 | 約445万円 |
| 30〜34歳 | 29万1,200円 | 約500万円 |
| 35〜39歳 | 32万4,400円 | 約555万円 |
| 40〜44歳 | 35万1,800円 | 約600万円 |
| 45〜49歳 | 37万2,800円 | 約640万円 |
| 50〜54歳 | 38万4,700円 | 約660万円 |
| 55〜59歳 | 39万9,200円 | 約685万円 |
※所定内給与は令和7年賃金構造基本統計調査(製造業・男女計)。年収目安は編集部試算。
20代(〜約445万円)
20代前半は390万円前後。
ただし交替勤務や夜勤の多い現場では、同年代の事務職より手取りが多いケースが珍しくありません。
30代(500〜555万円)
30〜34歳で約500万円、35〜39歳で約555万円。
「32歳・年収480万円」は平均とほぼ同水準です。
低いわけではありませんが、ここから伸びるかどうかは職種と会社規模で決まります。
40代(600〜640万円)
役職が付くかどうかで大きく差が開く年代です。
製造業では40代後半に賃金カーブのピークに向かいます。
50代(660〜685万円)
製造業の賃金は55〜59歳の39万9,200円がピークで、60〜64歳では30万4,000円に下がります。
再雇用による落ち込みが大きい点は押さえておきたいところです。
製造業の年収は職種によって違う?
同じ「製造業勤務」でも、職種によって年収は150万円以上変わります。
dodaの調査では技術系(電気/電子/機械)の平均年収は476万円ですが、内訳は次のとおりです。
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| プロジェクトマネジメント | 616万円 |
| 先行開発/製品企画 | 610万円 |
| デバイス開発 | 572万円 |
| 回路/システム設計 | 569万円 |
| CAE解析 | 554万円 |
| プロセスエンジニア | 533万円 |
| 生産技術/機械設計 | 519万円 |
| セールスエンジニア/FAE | 511万円 |
| 生産管理 | 505万円 |
| 組み込み/制御設計 | 496万円 |
| 品質管理/品質保証 | 482万円 |
| 評価/実験 | 477万円 |
| 機械/金属加工 | 390万円 |
| CADオペレーター(機械) | 365万円 |
出典:doda「平均年収ランキング2025」
製造・生産技能(約390万円)
機械/金属加工は390万円。
手当で押し上げることはできますが、基本給の伸びは緩やかです。
生産技術(約519万円)
生産技術/機械設計は519万円で、20代423万円、30代546万円、40代663万円と年代による伸びが大きいのが特徴。
現場経験がそのまま武器になる、製造現場からの王道ルートです。
品質管理・品質保証(約482万円)
品質管理/品質保証は482万円、40代で588万円。
ISO対応や監査対応の経験があると評価が上がります。
設備保全
社内では汎用職に見えがちですが、電気系の資格とPLC・シーケンス制御の実務があると、生産技術やプロセスエンジニアへの横展開が効きます。
研究開発・技術営業
先行開発/製品企画は610万円、技術営業/アプリケーションエンジニアは521万円と、いずれも高水準です。
工場管理
プロジェクトマネジメントは616万円で、技術系(電気/電子/機械)のトップ。
ライン全体を動かす立場になれば、製造業でも600万円台が見えてきます。
製造業は企業規模によって年収が変わる?
企業規模別に賃金を見ると、男女計で大企業38万5,100円、中企業32万6,200円、小企業30万5,600円(全産業)。
月額で約8万円、年収換算では130万円以上の差になります。
- 大手メーカー(1,000人以上)…賞与5〜6か月が珍しくなく、40代で700万円超も現実的
- 中堅企業(100〜999人)…平均前後。昇進スピードは速い場合がある
- 中小企業(10〜99人)…基本給の上限が低く、残業・手当で埋める構造になりやすい
- 下請け・協力会社…元請けの単価に賃金が連動するため、個人の努力では上げにくい
「今の会社にいても年収が上がらない」と感じる原因の多くは、能力ではなくこの構造にあります。
高卒・大卒で製造業の年収はどれだけ違う?
学歴別の賃金は高校29万7,200円、専門学校31万3,700円、高専・短大32万1,200円、大学39万6,300円、大学院51万7,400円です。
ただし製造業では、資格と専門性が学歴差を埋めます。
電験三種やエネルギー管理士を持つ高卒の保全担当者が、無資格の大卒より高い手当を受け取っている例は現場では普通のことです。
製造業で年収600万円は高い?
結論から言うと、年収帯ごとに難易度はまったく違います。
- 年収500万円…30代前半の平均水準。普通に勤めていれば到達できるライン
- 年収600万円…40代前半の平均。あるいは30代で生産技術・工場管理に進めば射程圏
- 年収700万円…大手メーカーの係長〜課長級、または高年収業種への転職が必要
- 年収800万円…課長級以上がほぼ必須。役職別の賃金は部長級63万5,800円、課長級52万9,200円、係長級39万9,200円、非役職者31万500円
つまり600万円は「高い」というより、40代の標準到達点。
到達していないなら、職種か会社規模のどちらかを動かす必要があります。
製造業で年収を上げる方法
1. 昇進・管理職を取りにいく
非役職者を100とすると、係長級128.6、課長級170.4、部長級204.8。
課長になるだけで賃金は約1.7倍です。
社内で年収を上げる手段として、これに勝る選択肢はありません。
2. 専門資格を取る
資格手当そのものは月数千円〜2万円程度でも、配置転換と転職市場での評価が変わるのが本当の価値です。
3. 高年収職種へ異動する
現場作業 → 生産技術・品質保証・生産管理への異動は、社内で実現できる年収アップの近道です。
4. 大手メーカーへ転職する
企業規模の差が130万円である以上、最も確実な打ち手です。
5. 成長産業へ移る
半導体、電池、医療機器、FA・ロボットなど、設備投資が続く領域は賃金上昇圧力が強い分野です。
dodaの業種分類別ランキングでもメーカーは492万円で2位につけています。
製造業で年収を上げやすい資格とは?
製造業で「手当」と「転職市場価値」の両方に効く資格は、ほぼ以下に集約されます。
- 第三種電気主任技術者(電験三種)…設備保全の最高峰資格。選任義務があるため需要が途切れない
- エネルギー管理士…第一種エネルギー管理指定工場では選任必須
- 危険物取扱者乙種4類…化学・石油・塗装系の現場で必須級
- 公害防止管理者…特定工場に選任義務あり
- 高圧ガス製造保安責任者…化学プラント・ガス関連で強い
- QC検定2級…品質管理・品質保証への異動で効く
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まとめ
- 製造業の平均年収は正社員で568万円、全業種平均を上回る水準
- 「月給×12」の記事の数字は現実より2〜3割低い
- 30代前半の平均は約500万円、40代前半で約600万円
- 職種による差は最大150万円以上、企業規模による差は約130万円
- 課長級になれば非役職者の約1.7倍
「自分の年収が低いのでは」と感じたら、比べるべきは同年代の平均ではなく、同年代×同職種×同規模の水準です。
そこでギャップがあるなら、動かすべきは働き方ではなく、職種か会社です。